モルミルスの飼育方法・・・AQUANAVI執筆時の原稿です...
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「Keeping point」
 ●混泳に要注意
 ●飛び出し注意
 ●ストレスを取り除く工夫をする
 ●餌はこまめに


水槽の仕様

日頃、ショップで目にする機会が多いモルミルスの仲間としては、エレファントノーズやホエールエレファント、ロングノーズエレファント、ダブルトランクエレファント、ドルフィンモルミルスなどで、これらの種は年間を通して比較的入手しやすい種類と言えます。
年数回輸入されてくるのがドンキーフェイスエレファント、トランペットモルミルス、エンギストマ、コニッシュジャック、ボベイなどがあり、最近ではスーパーロングノーズエレファントなどが入荷しています。

モルミルスと一口に言っても、広大なアフリカ大陸各地に分布し200種とも言われる種類があり、それぞれ形状や生息環境が異なるため一概に飼育方法を整理するのは困難ですが、ここでは比較的小型のモルミルスの飼育方法について整理します。

モルミルスの仲間は照明を消した直後から活発に水槽内を遊泳し、その遊泳速度はかなり速くそのため最低でも体長の3倍以上の水槽を用意する必要があります。

狭い水槽に入れた場合や水質が合わない等のストレスが強くなると飛び出すことが多くなるため、必ず隙間なくフタをすることが必要です。
水槽から飛び出す動作を繰り返す場合は何らかのストレスが掛かっていると考えられるので大きめの水槽に移動したり、水質を改善するなどできるだけストレスを取り除くようにした方が長期飼育に効果的です。




















水質

現地の水質は、吻(鼻)が長いロングノーズエレファントやヘンリー、ドルフィンモルミルス(ルメ・プロボスキロストリス) などでは河川の淀みや湖沼などに分布しており、水質は弱酸性(pH5.0程度)を示します。
吻が短いBrienomyrusGnathonemusなどの河川に生息する種は、中性付近のpH6.0〜8.0程度を示すことが多いようです。
また、ビクトリア湖などに生息する湖産のドルフィンモルミルス(M. kannume)ではアルカリ性硬水を示します。

モルミルスを実際に飼育してみるとpHの変化にはかなり適応力があることが分かるのですが、水質の悪化に弱い面があり、特に亜硝酸濃度が高くなると目が白濁したり、体表に艶がなくなる傾向にあります。
導入時には、現地のpHに合わせたこなれたきれいな水を作ることで良い結果が得られます。餌も摂取し、動きも活発になったら中性寄りの比較的新しい水に変えていって問題ありません。

河川産の種は、流れを作った方が状態が良いように見えますが、モルミルス類は、瞬発力はありますが持久力がないので強すぎる流れは好みません。


















底床

 底床は、吻部を傷つけないよう丸い砂利やソイルを用いるか、ベアタンクで飼育するのが一般的です。
特にCampylomormyrusなどの吻が長い種では、ソイルを用いた水草水槽で飼育するとモルミルス本来の生き生きとした姿を見る事が出来ます。



























現地では、主に軟体動物(アカムシ等のワーム類や水生昆虫の幼虫)、小エビ、種類によっては小魚やシクリッド等の幼魚を食べています。
他にも泥や植物質の腐食堆積物を食べるという意見もあります。

飼育時の餌としては、冷凍アカムシをメインに与えことをお薦めします。
通常の魚種では単食は短命に終わることが多いのですが、冷凍アカムシのみで8年以上の飼育実績があります。
糸ミミズは殆どの種が喜んで食べるので幼魚時や水槽導入時の食わせ餌として与えます。
ただ、糸ミミズのみで飼育した場合、雑菌が混じる場合があるためなのか、突然死することがあるため糸ミミズの単食は長期飼育には向かないようです。
個体によってはフレーク飼料などにも餌付く場合がありますが稀です。

状態の良い個体は意外な程よく食べますので混泳水槽では、十分餌が回るようお腹のふくらみ具合を確認しながら与えます。
気がついたらガリガリになっていたということもありますので日頃から観察が必要です。
消化は早いようですので1日に数回餌を与えるようにすると成長が格段と早くなります。



















混泳

小型魚(カラシンやバルブ類)との混泳は特に問題はありませんが、それらと混泳させる場合は必ず落ち着けるシェルター(流木や土管)を設置します。
南米産ナイフフィッシュなど電界を造る魚種や、遊泳性の強い魚種(パンガシウス類など)、吸い付く魚種(プレコ等)との混泳はストレスがたまるので向きません。
魚食性の魚種と混泳させる場合は、特にサイズに気を付ける必要があります。モルミルスは体幅がないので同程度の大きさであっても在る日つるっと呑み込まれる可能性があります。
混泳可
小型魚
 混泳注意 
口が大きい肉食魚

電界を作る魚

強遊泳魚

吸い付く魚

小型底物系

ヒレが長い魚

モルミルス同士を混泳させる場合は、シェルターを個体数以上、必ず用意します。その場合、シェルターから他のシェルターを見通せないよう、設置高さを変えたり、角度をつけたりして設置した方が良い結果が得られます。
ウイロモスの塊などを入れておくのも効果的です。
種類によっては群れを作る種類もいますが、水槽飼育ではかなり多く入れないと群泳はみられません。  
 

モルミルス類は口が小さく咬みつくことがないように見えますが、意外と咬みます。
餌を与える際に手をついばませてみると意外とチクチク痛むことが分かります。
同居魚の鱗が剥げたりしていた場合、この歯で夜間にやられている可能性がありますので、混泳させた翌日は特によく観察することが大切です。



















病気

入荷直後の個体は喧嘩による咬傷やスレ等のため、鱗が剥げ落ちたり体表が荒れていることが多いので、導入時には特に感染症に注意する必要があります。
薬浴させる場合は投薬規定量の半分程度にして用いた方が良いでしょう。 殆どのモルミルスは22℃〜28℃程度の水域に生息していますが、弱った固体の場合は水温を30℃程度の高めの温度に設定し、塩と粘膜保護剤を用いると良い成績が得られることが多いです。
購入する際は、鱗が若干剥げた程度なら大丈夫ですが、やせた個体だけは購入を控えた方が良いです。
一度やせてしまうと立ち上げは難しく、元に戻るまでかなり時間が掛かってしまいます。



















繁殖

モルミルスは食物連鎖の下方に位置するためなのか、かなり多産で、Hyperopisus bebeで18,924卵の記録があり、M.longirostrisでは1万〜7万卵をはらむと言う報告があります。
最近、東南アジアではこのドルフィンモルミルス(M.longirostris)の繁殖に成功しており、定期的に輸入されるようになりました。
他にはイシドリィ(Pollimyrus isidori)などで繁殖が確認されています。雌雄差は種にもよりますが尻ビレの形状・厚さや、腹部の膨らみ、パルス形状などで判別することができるようです。
繁殖させる場合は、かなり大きめの水槽で数ペア飼育し、徐々に伝導率を下げて行くと約2ヶ月程度で産卵するとのことです。
現地では雨季に上流に移動し産卵するドルフィンモルミルス(M.longirostris)や、オスが巣を作り周囲を警戒するイシドリィ(P. isidori)などの習性が知られています。モルミルスは多数の卵を数回にわけて産卵します。



















問題点

 多種多様な種が存在し、現地では食用となっているモルミルスですが、日本に輸入されてくる種類は極々僅かしかありません。
本誌の特集記事を読んで色々な種を飼育してみたいと思う方も多いと思いますが、日本未入荷種や写真でさえ入手困難な種が多いのが困りものです。
また、アフリカから入荷した直後の状態はあまり良いといえる状態ではないことが多く、今後は現地シッパーの輸送状況の向上が望まれます。

集めだすときりがなく、欲しいときに手に入らない、とてもミステリアスでマニア心を誘うモルミルスをこの機会に是非飼育してみてください!